「手紙魔まみ 夏の引越し(ウサギ連れ)」10年ぶりに読み返す
『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』とフランチェスカ・リア・ブロックの『「少女神」第9号』と西村しのぶを読み返したくなった。もう煌めいた年頃じゃない自分の目線から新しい感情を得たい。
— ふっこ (@fuccowire) 2016, 1月 4
ふっこさんのこのTweetを見て、ハッとしました。
穂村弘「手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)」という連作歌集なんですが、
10年くらい前にふっこさんに教えて頂いて夢中になって読んだ記憶があります。
当時、穂村弘の本はエッセイしか読んだことがなくて
「世の中からずれてる、なんか気持ち悪いおじさん(でもそこが好き)」と思ってたんですが、
この歌集を読んで こんな素敵な短歌も書いてるなんて!と衝撃を受けました。
今までとは全然違う一面を見た感じ。
エッセイも面白いのでおすすめですよ!
▽ 穂村弘のエッセイ
穂村弘「手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)」amazonから引用したあらすじ
キャバクラ嬢やウエイトレスをして暮らす女の子「まみ」は、歌人「ほむらひろし」にせっせと手紙を書き送る。
妹の「ゆゆ」や最愛のクロウサギとの、詩的でほわほわしていて乱れていてストイックな生活、
まみとゆゆを巡る恋人や友達や隣人たち、そして切なくふるえるまみの愛の祈りを、
短歌240首とタカノ綾のカラーイラスト10点で活写する。
気にいった短歌をピックアップしていったらものすごい量になってしまったんですが、
当時私は気にいった短歌として7つ選んでいたので、今回も7つ選んでみます。
:::当時 二十歳のときに気にいった短歌:::
・「汝クロウサギにコインチョコレットを与ふる勿れ」と兎は云えり
・兎の目を通じてまみのSEXが宇宙に実況中継される
・甘い甘いデニッシュパンを死ぬ朝も丘にのぼって食べるのでしょう
・ハイジャック犯を愛した人質の少女の爪のマニキュアの色
・ぬいぐるみの口のなかには宝石がいっぱい詰まっている夏の朝
・マフラーがちくちくしない方法を羊に教えてもらう日曜
・アイスクリームの熱い涙を嘗めたがるおりこうさんという名のウサギ
:::現在 気にいった短歌:::
・兎の眼を通じてまみのSEXが宇宙に実況中継される
・ほんの少し、風のつよめの日を選び、草原スープ婚のはじまり
・目の前に海がひろがるテラスにて花とお刺身のごはんをどうぞ
・星の夜ふたり毛布にくるまって近づいてくるピザの湯気を想う
・午前四時半の私を抱きしめてくれるドーナツショップがないの
・ティーバッグ破れていたわ、きらきらと、みんながまみをおいてってしまう
・大切なことをひとりで成し遂げにゆくときのための名前があるの
どうでしょう。
二十歳のときは、ファンタジックで 情景が思い浮かぶような短歌が多くピックアップされています。
現在は、結婚生活をイメージさせるような短歌、もしくはなんとなく切ない短歌が多い気がします。
この十年で、私をとりまく環境や心境が変化したためでしょうか。笑
今回読み返してみて、自分を見つめ返すきっかけになりました。
また10年後に読み返すと、感じることが違ってくるんでしょうね。
「兎の眼を通じてまみのSEX~」は、昔も今も変わらず好きな短歌です。
今一番好きなのは「星の夜ふたり毛布にくるまって近づいてくるピザの湯気を想う」ですね。
こんな短歌を作れる穂村弘って人は本当すごいな。
タカノ綾が挿絵を手掛けているんですが、これがまたエッチな雰囲気で当時ドキドキしながら眺めた記憶が…!
写真撮るのに、恥ずかしくて思わず隠してしまった。